解説:
“招かれざる客”(この邦題はうまい)が優等生S・ポワチエなので、大体、後半の展開は察しがついてしまうのだが、トレイシーとヘプバーンの名優コンビ が、リベラリストたる面の皮を剥がされる新聞社社長とその夫人を演じ、さすがにうまくて舌を巻く、S・クレイマーの問題作。世界的にその名を知られる黒人 医師ジョン(ポワチエ)はハワイで知り合った白人女性ジョーイ(C・ホートン)と人種の壁を越えて結婚を誓い合い、互いの両親の許しを得るためサンフラン シスコのドレイトン家を訪れる。最初戸惑っていた母も、娘の喜ぶ様子を見て次第に祝福する気になるが、だが父マットはそうはいかない。彼は人種差別反対を 自ら経営する新聞の論調としてきたが、いざ自分の娘が黒人と結ばれるとなると心境は複雑だ。やがて、ジョンの両親プレンティス夫妻もかけつけるが、彼らも 息子の相手が白人とは知らされていず愕然とする。けれども、彼の母も何より子供の愛を信じた。こうして、二人の母同士の強い説得によって、頑迷なマットの 心もほぐれ、娘たちの仲を認めてやるのだった。アメリカのある年代のインテリ層には、それでもかなり影響力のあった映画なようで、フレッド・スケピシの 「私に近い6人の他人」で、本作とポワチエが思い入れたっぷりに語られる場面があったが、一般に“進歩的”と言われる白人でも、この映画の認識に留まって いるのが現在でも実情だろう。ヘプバーンが二度目のオスカー主演賞を受賞し、トレイシーの遺作ともなった作品。
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