解説:
頑ななまでに自らの主義・主張を貫き通す男アリー・フォックス。アメリカの管理された文明社会を嫌う彼は、ある日決意を固め、妻と4人の子供たちを連れて中米のホンジュラスへ向かう。そして彼らが辿り着いた場所は、ほとんど手つかずの密林“モスキート・コースト”。まさしく文明とは無縁の環境の中、一家総出で理想の地の開拓に励んでいく。またやがて、発明家としての才を生かし巨大な製氷機を作り上げるアリー。そんなある時、一家の前に3人の武装した男たちが現われる。しかし、彼らを製氷機に閉じこめるものの間もなく爆発しアンモニアが流出、ジャングルを汚染してしまう。やむなくジャングルを離れ、海岸に移り住むアリーたちだったが…。文明社会に背を向けるとはいっても、アーミッシュを扱った「刑事ジョン・ブック/目撃者」とは大分趣を違えるウィアー=フォードのコンビ作。アメリカ特有の開拓精神を洞察するP・セローのベストセラー小説が原作で、家族を道連れに、中米ホンジュラスの密林“モスキート・コースト”に理想の村を建設しようとする、徹底した個人主義者の発明家の苛烈な行動を描く。ただでさえ刺激的な物語を、脚本化したのがP・シュレイダーなので、エキセントリック度がとみに増し、ハリウッド入りしてからのウィアー作品の中でも異色のテイスト。誰もが不愉快に思いこそすれ理解はしない難しい役柄を、篤実さが売りのフォードが意外にうまくこなして、完全な拒絶反応をそのキャラクターに起こさせることは回避している。今は亡きR・フェニックスが息子役。彼自身がこうしたドロップ・アウターの両親に育てられた。
|