解説:
プロデューサー時代のS・クレイマーが製作した西部劇、というよりも西部を舞台にしたリアルな人間ドラマ。1870年、ハドリービルという西部の小さな町。結婚式を挙げたばかりの保安官ウィルの元に、かつて逮捕した無法者の帰還の知らせが入る。様々な思いの末、彼らとの対決を決意するウィルだったが、戦いに否定的な新妻エミーは一人町を去ろうと駅へ向かう。ウィルは協力者を求めて、炎暑の町を歩き回るが、臆病で利己的な住民たちはその門を閉ざす。やがて正午となり、駅に列車が到着、エミーが乗り込むと同時に、ウィルへの復讐を誓う無法者が降り立った……。男の夢の具現化でもある西部劇に、非情な人間関係を盛り込んだ事で毛嫌いする人も少なくないが、そのリアリティ溢れるドラマ運びはやはり面白い。登場人物それぞれの思惑が入り乱れる中、全く普通の男である主人公が孤立無縁となる筋立ては、ヒーロー像を否定しつつもかえってその構図を際立たせるものになっており、娯楽映画としての定石を果たしている。劇中時間と実上映時間をシンクロさせた事も、作品を貫くリアリズムに貢献しており、その実験的発想の勝利であったが、何よりドキュメンタリーの巨匠ロバート・フラハティの元で修行を積んだ、F・ジンネマンのタッチこそが最大の力だ。美しいケリー、逞しいクーパー(二度目のアカデミー主演男優賞受賞)、ピンポイントの名キャスティングも言うことなし。
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