解説:
今や映画史上の傑作となってしまった「2001年宇宙の旅」の続編という、あまりにも畏れ多いプロジェクトに敢然と挑戦したのは、「カプリコン・1」や「アウトランド」といったSF作品も手掛けているP・ハイアムズ。なんと監督のみならず脚本・撮影・製作まで担当し、男の気概と意地を見せつける。前作で未解決だったモノリスの正体や、ディスカバリー号のその後に決着をつけるべく、アメリカ人科学者らを乗せたソ連の宇宙船レオーノフ号が木星へ向けて旅立った。前作にも登場していたフロイド博士が主人公となり(役者はウィリアム・シルヴェスターからR・シャイダーに交代)、彼が目撃するボウマン船長(前作同様K・デュリア)の幻影を交えながら、大宇宙の深遠で起ころうとしている奇跡が描き出される。もはや“映画”のワクすら超えた感のある「2001年宇宙の旅」と比較するのは野暮、これは前作にインスパイアされた番外編なのだ。監督に全てを一任したクラーク、それに応えたハイアムズ、考えるだに恐ろしいプレッシャーの中、本格的な宇宙SFドラマを構築しえたハイアムズの力量こそを見よ! レオーノフ号とディスカバリー号の間に渡されたブリッジのシーンにおける、足元に広がる宇宙空間の無限の広がり、ディスカバリーに到着しヘルメットを脱ぐ瞬間の恐怖と、思わず船内の臭いをかぐ仕草など、前作では稀薄だった“宇宙における人のリアクション”を重視したディテールなど、これこそ宇宙SFドラマの真骨頂であろう。劇中、ボウマンがフロイドに語る“何か素晴らしい事が起ころうとしている”というメッセージは、新たなる生命の誕生、両大国の和解だけでなく、この作品の完成そのものを暗示していたような気さえするのだ。
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