解説:
P・バリーの戯曲をD・O・スチュアートとS・バックマンが脚本化した、G・キューカーの数多いロマンチック・コメディの傑作の中でもとりわけの一本。大げさに言えば、自由経済社会の中で真理を見究める生きる術がさり気なく語られ、キャプラ作品の単純明快な人生哲学の数段上をいく、現在でも充分通用する大人の処世訓の得られる映画でもある。
主人公ジョニー(グラント)は天涯孤独の身の上。親友で兄姉のように慕うニックとスーザンのポター夫妻(ホートン、ディクソン共に好演)を結婚の報告に訪れる。相手の素性はよく知らない、とにかく愛しているからそれでいいのだ--と、冬のリゾート地レイクプラシッドで知り会った婚約者(ノーラン)のことを楽しげに語るが、その住所を訪れてみると大変な豪邸で、てっきりここの使用人かと勝手口から入れば、“それは次女のジュリア様でございます”との返答に肝を潰してしまう。が、その姉リンダ(ヘプバーン)とも打ち解け、変わり者の弟ネッド(エアーズ)にも気に入られたジョニーは、彼らが屋敷内で唯一心落ち着く場だという元子供部屋で楽しげに語らう。彼らの父シートン氏は大銀行家でジョニーの値踏みにうるさいが、彼が勤める金融会社の社長は友人で、有能な男だと聞き、娘の婿と決める。リンダはお披露目はささやかに子供部屋でとっておきのもてなしをしたいと父にかけ合うが、裏切られ、それは壮大なパーティに変ずる。折しも大晦日で、新年の幕開けと共に婚約が発表される手筈が、その時、ジョニーはリンダと共に子供部屋にいた。“よりよく生きるために目的を探す休暇が欲しい”という彼の夢を語って、二人でダンスをして……。その後、行方をくらましていた彼は、ポター夫妻のフランス行きに同行することに決めたが、その後を追うのはジュリアでなくリンダだった。快活で嬉しいととんぼ返りするグラント、理知的なロマンチストのヘプバーン、二人の持ち味が燃えるルビーのように結晶した、愛らしくてたまらない逸品だ。
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