解説:
'64年、NYブロンクス。刑務所を出たハインツ(タートゥーロ)が町に帰ってきた。まともを装う彼だが、どうにも怪しい。彼がなぜ獄中にあったかといえ ば、かつて、ペットショップの店員のリンダ(フォスター)を襲ったからだが、その時、彼女を助けたハリー(ロビンス)はケネディ暗殺後の今や完全な非暴力 主義で、自室の壁にはガンジーやキング牧師のポスターを貼り、公民権運動のデモに参加する毎日。リンダに心を寄せる男友達もハインツの言動を警戒し、帰宅 する彼女の元に駆けつけるが、地下鉄のトークン・コインを落としたばかりに、彼女を彼に連れ去られる。リンダを気絶させ、フランケンシュタインよろしく抱 えてさ迷うハインツはある廃ビルの屋上にたて篭る。それはまた、キャグニーのギャング映画のようでもあった。警察のライフルが遠まきに彼を狙う。そこへ難 を聞き駆けつけたハリー。そして語られるハインツの歪んだ過去……。だが、解決は痛ましくも呆ッ気なかった。ユーモラスで鋭敏なディテールを積み重ね、サ スペンスを滲ませる前半は見事。後半のサイコ・ホラー調は無理矢理だが、タートゥーロ怪演で、かえってこの部分が好きになる人もあるかも。監督は小市民ド ラマにセンスを発揮するT・ビル(「忘れられない人」)。
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